部長『奥さん元気か?そういうの好きそうだから、夜大変じゃないのか?』俺「まぁそこそこ頑張ってます(とやかく言われる筋合いはねーよ)」→こういう事を言われた、と嫁に伝えると黙って俯いたまま・・・

俺が彼女を初めて見たのは新入社員研修の最後のセクションだった。
各部署の説明で彼女の所属している部署の説明のアシスタントとして研修に来ていた。
肉厚な唇、くるくるとよく動く大きな目をした子でかわいいなぁというのが印象であった。
2ヶ月ほどして会社の組合で新入社員歓迎のボーリング大会があった。
現地集合、会社に戻って組合での総会というスケジュールであった。
ボーリング大会は新入社員懇親という意味合いが強く
レーン分けは新入社員が偏らないように組合の執行部がバラバラにレーン分けをしてきた。
彼女と俺は隣のレーンだった。何となく雑談。
「今日寝坊して遅刻しそうでやばかった」
「寮の○○ちゃんの車で一緒に来たけど
 総会は出席しないでデートっていってたから会社に戻る足がない」とのこと。
「俺の車でよければ乗っけていきますよ」って感じで2人で車で移動。
「このまま2人でどっかあそびに行こうか」という話にもなったが、
「新入社員のうちから社員総会バックレると睨まれるよ」
ってことで、おとなしく会社に戻る。
しかし、来週末のデートの約束は取り付けた。
こうして俺と彼女のつきあいは始まった。
つきあい始めて3度目のデートで肉体関係をもった。
何回かデートを重ねるうちに、彼女は9月末で会社を退職する予定とのこと。
「24になっていい彼も見つからないし親は見合いの話もバシバシ持ってくるんで
 気に入った人がいれば結婚するんだろうなぁっておもってたんです」
「母親も体調良くないし親元に帰って親孝行するつもりだった」とのこと。
彼女は4月の終わりに上司にその旨を伝え
「夏のボーナスをもらって退職したい」と話したが、
「4月で後任もまだ考えられないんで、l上期の間いっぱい勤めてくれないか」
ということになり了承したという。
「俺さんとこんな関係になるんなら会社やめるっていわなきゃよかったなぁ」
「あと2ヶ月早く出会ってたらなぁ」としきりにこぼす彼女ではあったが、
「2時間かからない距離だし、これからもつきあっていこうよ」と促す俺。
4ヶ月後に彼女は退職し、今までのように頻繁には会えなくなったが交際は続いた。
特に会社の人で俺たちが交際してることを知ってる人はごく数人。
彼女の親しい子ばかりだった。
俺はすごいマイペース人間で、誰と誰がつきあってるとか言う社内の噂とかには全く疎かったし
そんなことは他人が心配しても仕方がないことだと思っていた。
それから3年後の秋、俺と彼女は結婚した。
先輩、上司は結構驚いたようだった。
「へーあの○○さんとおまえが結婚とはね」
二人の結婚生活は順風満帆であった。結婚して2年後には娘が生まれた。
時は流れて、それから結婚して4年後の秋に俺は人事異動で違う部署にうつった。
俺「今度の部長は△△さんだ」と嫁さんに伝えると
嫁「へー、私が勤めてるときは課長だったのにね」くらいの会話だったと思う。
新部署での歓迎会で、部長のとこに「よろしくお願いします」と酒をつぎに行ったとき
部長から「奥さん元気にしてるか?」
「工ッチそうだから夜も大変じゃないのか?」といった感じでいわれた。
俺の嫁さんのことをおまえにとやかく言われる筋合いはねーよと思いかなり頭にもきたが
「まぁそこそこばんばってます」といった無難な返事でその場は凌いだ。
かなり腹が立ってた俺は、うちに帰ってからそのことを嫁に話した。
「部長は確かに仕事はできると話には聞いていたし
 実際出世頭なんだけども、あんなヤツとは思わなかった」
「あんまり個人的な相談とかはしない方がいいなぁ」
「俺の中でのイメージ変わったよ。どう思う?」
と嫁に話すが黙って俯いたままであった。
「いくら同じ会社に勤めていたからといって工ッチそうとかいわれたんだぞ?」
「おまえを抱いたことがあるわけでもあるまいし」
嫁「そうじゃないの」ひとこと言うとまた黙り込んだ。
そうじゃないってどういう事?
俺の目に映るリビングが歪みぐるぐる回り出した。
俺は目をつぶりカーペットの上にひっくり返った
『どういう事なんだ』
ひとこと言ったのが精一杯だった。
嫁は ぽつりぽつりとしゃべり出した。
嫁は俺と知り合う前、部長とフ倫関係にあったということ。
嫁の方が部長を好きでモーションをかけたこと。
嫁は部長の奥さんも知っていたので
奥さんに迷惑がかかると思い絶対に知られてはならないと思ったこと。
あえばラブホでセックルばかりしてたこと。
好きな人と思いを遂げられて幸せではあったが、
フ倫の関係が永遠に続く訳がなく1年近くたち、フ倫関係を断ち切ろうと思ったこと。
1年近く続いたフ倫関係に終止符をうってもまだ部長が好きだったこと。
同じ会社にいれば思いが断ち切れがたいんで会社を辞めようと決心したこと。
折しも親が縁談話を持ってくるようになったんで
親元に帰り家事手伝いをしようと思ったこと。
俺と嫁との出会いは2人がフ倫関係を清算してから間もなくだったのだ。
「そんな中であなたに出会えてうれしかった」
「私のことほんとに愛してくれたし、課長の事を忘れさせてくれた」
「今の私はとっても幸せよ」
『今はそうかもしれないけど、そのときは部長がまだ好きだったんだろ?』
「そうね、つきあって半年くらいまでは課長がナンバーワンだった」
「でもあなたとつきあう前に終わらせてるし、
 課長は今でも好きだけどあなたとつきあいだしてから何もないわよ」
嫁の言葉に俺は返事もせずに寝室へと足を向けた。
ほんとに今では俺がナンバーワンなの?
未だにナンバーツーなんじゃないの?嫁のほんとの心の内は?
彼女以外は知るよしもないじゃないか。
ここから俺は悶々と苦悩の日々を迎えることになる。
それからしばらくして、俺は部長に「飲みに行きませんか」と誘った。
二年ほど前に奥さんを事故で亡くした部長は高校生の息子と二人暮らしだ。
上の息子は大学生で離れて暮らしてる。気ままな男所帯だ。
「いつでもOKだよ」と笑って部長は招待に応じた。その席でのことである。
「二人の過去の関係を知ったが今は私の嫁だし、こないだのような話は不愉快だ」
ときっぱり言うつもりであった。
が部長から出た言葉は信じられないものであった。
『嫁を抱かせてほしい』
嫁を取られるかもしれない。
が、本当に彼女が一番想いを遂げたい人が俺でなく部長だったら?
今なら前のように奥さんに気兼ねすることはない。
彼女の中でのナンバーワンは俺なのか部長なのか?はっきりさせたいと思った。
「俺の一存では決められません」
俺の口から出た言葉は曖昧なものだった。
うちに帰り嫁に話した。
嫁は【喜んで】同意するじゃないだろうか?
目を輝かせるかと思いきや
「そんなのは絶対イヤ!課長とはもう終わったことなのよ」
「あなた以外に抱かれるなんて考えられない」というものであった。
俺は正直ほっとしたが、肉体関係が戻ればどうなるかわからない。
「俺の出世のためと思って頼む。1度きりだから」
(出世のためというのは口から出任せ)
そして、2ヶ月ほど粘り強く口説いた結果、
嫁はほんとに1度だけという条件で△△部長の願いを叶えることに了承した。
冬の終わりの土曜日、俺は嫁を車に載せて部長の自宅へと向かった。
嫁を部長宅で降ろし俺は時間をつぶすために近所の喫茶店にいこうと車を回した。
玄関先で振り向いた顔が悲しそうに俺を見ていたのが強く印象に残っている。
3時間少したった頃に、嫁から迎えに来てと携帯に連絡が入った。
帰りの道中。嫁は無言だったし、俺も話しかけることははばかられた。
帰ってからすぐに風呂に入った以外は嫁は全く変わることなく、
俺の好物のトンカツを夕食に作り寝室へ向かった。
滅多に嫁から求めることのないセックルであったが、その晩は嫁の方から求めてきた。
嫁から出た言葉は「もはや愛してもいない人とセックルしても感じない」ということだった。
「感じないことはない。濡れるし、それは女の体を守るための本能とおもう」
「でもエクスタシーは感じなかったわよ」
「今の私にはあなたしかいないの。いっぱい気持ちよくして」
「あんな人に抱かれたことも忘れさせて」
この言葉を嫁から聞き、俺は自責の念にさいなまされた。
こんなにつらいことを嫁に強要したんだと。
俺は最初泣きながら嫁を抱いた。
想い出に残るくらい激しいセックルだった。
その夜嫁は7回逝き、俺は2回逝った。
俺の気持ち的にもすっきりした。
今嫁が愛してるのは やはり俺なのだと確認できたし
嫁との関係が壊れなければなんの問題もないと思っていた。
週があけての月曜日、俺は部長から呼ばれた。
「またちょくちょく頼むよ」といったことだった。
俺は即座に断った「2度目はないよ」ときっぱり言い切った。
だいたい嫁がもうその気がないんだからどうしょうもないと説明したが、
「まあそういわずに頼むよ」って感じでいってきた。
俺はいうべき事は言ったつもりだったので黙って引き下がった。
これで部長もあきらめがついた事だろう。
それから2週間ほどたって、俺は再び部長に呼ばれた。
どうだろうといわれても、俺は断るしかなかった。が、部長は
「そう急いで結論を出さなくてもいいじゃないのか、気長に待つよ」と。
冗談ではない。これで何度も部長に抱かれでもしたら
嫁の方に情が出てきて離れられなくなってしまう。最悪俺が捨てられる。
2,3週間から1ヶ月ほどおいてこの短いやりとりは数回続いた。
そんな中、5月末の給与明細を見て俺はびっくりした。
日和見的な会社で、全国的な昇給をみて5月に最終決定していた。
昇給は4月にさかのぼってであるが支給は5月の振込日まではわからない。
給与明細に記された昇給差額が大きい。
事前に組合と会社で合意した資料が回覧されるが、それよりも昇給額が大きいのだ。
PCで人事のWebページにアクセスし賃金表と前の給与、新給与を見比べてみると
前期の俺の人事評価は通常考えられるものの中で最高だったのだ。
俺の人事評価は悪い方ではなかったが。
今までこんなに高い評価がついたことはなかった。
ヤツが下駄を履かせてるだろう事は容易に想像ついた。
翌日はたして部長から声がかかった。
「俺の意志は汲んでくれるよな」ということだった。
人事にいう?言えるわけがない。
仕事を拒否する?これから 部 ではおれの居場所が亡くなるだろう。
それからどうする?考えたあげく、俺は部長に転属の願いを申し出た。あっさり断られる。
理由は転属して半年ちょっと、10月付の異動でも1年しかこの部署で勤務していない。
当然管理能力を問われるか管理責任が部長にかかってくるだろう。
「何とかして異動は考えられないのか、人事にも掛けあって欲しい」
とお願いしたがそれはかなわなかった。彼はそれを拒否したのだ。
あるいは拒否できないようにがんじがらめに縛ろうとしたのかもしれない。
そんな状況の中ででも部長は相変わらず、嫁を抱かせろという要求をし続けたのだ。
このストレスの中、十二指腸潰瘍まで煩ってしまう始末であった。
どうしようもなくなった俺は「退職まで考えている」と部長にいった。
「そこまで考えているんなら人事に掛けあってみる」
とはじめて態度を軟化させたようにも見えた。
数日後、部長から呼ばれたときにいい返事がもらえると思っていた俺であったが
回答は全く異なるものであった。
「会社はおまえを中心に回ってるわけではない」
「そんな早急で我が儘な異動は認められない」
「嫌なら辞めろ」という内容だと部長から聞かされた。
俺は嫁に会社を辞める決心が付いた事を伝えた。
二つ返事で嫁は賛成してくれた。
翌日、部長に会社を辞めるかもしれないことを匂わせたが
ヤツは本気では受け取っていないようだった。
ボーナスが支給される7月末付けの退職を考え7月1日付で退職願をだした。
が、彼の目は冷ややかだった。
「ふぅむ、決心は固いのか。そうなら慰留しても仕方ないな」
3日後、人事の同期のやつからメールが来た。
「何があったんですか?ウチの部長(人事部長)も寝耳の水でびっくりしてましたよ」
そう、人事に掛けあうとは真っ赤な嘘でやつの一人芝居だった。
だが俺は悔しいという気持ちより、
こんなとこに勤務しなくて済むんだという、すがすがしい気持ちの方が強かった。
退職金も出ることだし、1ヶ月くらいはのんびりするか。
そう考え久しぶりに学生時代の友人数人と呑みに出かけ
会社を辞めるという話をしたら、さすがに友人たちまでびっくりしていた。
もちろん辞めたほんとの理由は話してはいないが。
その席で友人の一人から話があった。
「ウチの会社来ない?うちっても親父の会社でまだピンピンしてるけど」
「おまえ専門って××だったし今の会社でもそうなんだろ?」
「俺が片手間でやってるんだけど追いつかないんだよね」
従業員30人ほどの会社であったが友人はそこの御曹司だった。
こうして辞表を出した1週間後、俺の再就職は決まった。
それから1年。いま嫁のお腹の中には6ヶ月の赤ん坊がいる。
今度の正月は家族が増えて4人で迎える正月になりそう。
あのとき部長に屈していたら、この幸せはないだろう。
が、嫁にとってのナンバーワンは俺じゃないんじゃないかって疑ったために
会社を変わったことも事実。給料も下がったしね。
みんな、恋人、奥さんを信じて大事にしろよ。